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京都地方裁判所舞鶴支部 昭和48年(わ)19号 判決

主文

被告人を懲役二年六月に処する。

未決勾留日数中二〇〇日を右刑に算入する。

押収してあるカラー八ミリ映画フィルム六巻を没収する。

理由

(罪となる事実)

被告人は、

第一、昭和四八年二月二三日、京都府与謝郡○○町△△△△△△△×××番地所在暴力団仲間の乙山次郎の居宅において、同人が同日午後一一時ごろから翌二四日午前五時ごろまでの間、三、四回にわたり、多量の覚せい剤粉末を水に溶かして身体に注射し、覚せい剤中毒性精神障害に陥り、幻覚妄想の圧倒的支配下にある心神喪失状態になり、同日午前五時ころ、同人方二階の四畳の間において、その内妻甲川花子(昭和一四年一二月二五日生)が北鮮の大物スパイであり、同女を殺害しなければ日本国が滅亡するとの妄想に支配され、同人方にあった刃渡り五六・四センチメートルの白鞘造りの脇差及び刃渡り五三・三センチメートルの黒鞘造りの脇差で、就寝中の同女の腹部、背部、後頭部等を突き刺し、切りつけ、よって同女をして、間もなく同所において、失血死するに至らせた際、右乙山が同女を殺害に及ぶものとの認識の下に右乙山に対し右脇差し二本を手渡して同人の右犯行を容易ならしめ、もってその犯行を幇助し(昭和四八年(わ)第一九号、昭和四八年三月二四日付起訴の分)、

第二、(一)、昭和四七年一二月中旬頃、宮津市○○○××××××の当時の自宅において、甲野一郎に対し、男女性交の場面等を露骨に撮影したカラー八ミリ映画フィルム、二巻を代金二万八千円で売却し(昭和四八年(わ)第三五号、昭和四八年六月三〇日付起訴の第一の分)、

(二)、海山冬夫と共謀の上、右同年同月二〇日頃、同市○○○××××、月山春夫方において、同人に対し、前同様のカラー八ミリ映画フィルム、三巻を代金四万五千円で売却し(同日付起訴の第二の分)、

(三)、海山冬夫と共謀の上、翌四八年二月上旬頃、右月山方において、同人に対し、前同様のカラー八ミリ映画フィルム、二巻を代金二万四千円で売却し(同日付起訴の第三の分)、

もって夫々わいせつ図画を販売し、

第三、舞鶴市字市場上二七三番地を本拠とする大日本平和会系三丹久富連合会(以下久富組と略称する。)の友誼団体である大日本平和会宮津支部島田組(組長島田明)の舎弟であったところ、昭和四七年九月頃より同市余部上二〇一番地に事務所を設けた山口組系小政組組員が既存の久富組の縄張りを荒したことについて同四八年一〇月七日久富組の下部組織である奥分組組長奥分勝博が右小政組組長井上正己に対し「のれんを降せ」と同組の解散を迫って圧力を加え、右井上がこれを拒否したことに端を発し、さらに同月一〇日午前二時頃右小政組の友誼団体である山口組系岡本組舞鶴支部長稲生晴茂を奥分組副組長中西繁和が拉致したことによりますます抗争状態を強め、右久富組と岡本組、小政組とが双方対峙し一触即発の状態に至った。そこで被告人は、同月一一日午後三時頃から翌一二日午前三時頃までの間、右久富組事務所及びその周辺において、岡本組及び小政組の組員から襲撃を受けた際はこれを迎撃し、右組員らの生命・身体に対し共同して危害を加える目的で、模造刀二振、木刀一本、竹槍一本、鉄パイプ二本、野球用バット一七本等が準備してあることを知りながら久富組の傘下及びその友誼各団体の組員である前記奥分勝博、森弘、久平進、高見正則、信川こと康栄吉、前場高信、松岡石造、森下彰、石井久雄、下釜愛次、中村明、岡田こと金尚孝らとともに待機して集合し、もって二人以上の者他人の生命・身体に対し、共同して害を加える目的をもって、兇器が準備してあることを知って集合し(昭和四八年(わ)第五七号、昭和四八年一一月二日付起訴の第二の分)、

第四、昭和四九年五月八日午後四時三〇分ころ、宮津市字文珠、喫茶店「メール」前空地において、星川夏夫に対し、男女性交の場面等を露骨に撮影したカラー八ミリ映画フィルム三巻を代金四万五千円で売却し、もってわいせつ図画を販売し(昭和四九年(わ)第四五号、昭和四九年五月二二日付起訴の分)、

第五、法定の除外事由がないのに、

(一)、同年五月二日午前一一時三〇分ころ、岐阜県羽島市付近を京都方面に向け進行中の国鉄新幹線ひかり号グリーン車便所内において、フェニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤粉末約〇・〇三グラムを水に溶かして自己の左腕部に注射し(昭和四九年(わ)第四六号、昭和四九年五月二四日付起訴の第一の分)、

(二)、前同日午後七時すぎころ、福知山市字上六〇の当時の自室において、前同様の覚せい剤粉末約〇・〇三グラムを水に溶かして自己の右腕部に注射し(同日付起訴の第二の分)、

もって夫々覚せい剤を使用し

たものである。

(証拠の標目)《省略》

(前科関係)

被告人は昭和四四年三月七日京都地方裁判所宮津支部で、道路交通法違反、業務上過失傷害、傷害、脅迫、窃盗の罪につき懲役一年一〇月に処せられ、昭和四六年一月一三日右刑の執行を受け終わったものであって、右事実は検察事務官作成の前科調書によってこれを認める。

(法令の適用)

一、(判示第一の所為につき) 刑法六二条一項、一九九条

一、(判示第二の(一)(二)(三)、第四の各所為につき) 同法六〇条(判示第二の(二)(三)についてのみ)、一七五条、罰金等臨時措置法二条三条

一、(判示第三の所為につき) 刑法二〇八条ノ二第一項、罰金等臨時措置法二条、三条

一、(判示第五の(一)(二)の各所為につき) 覚せい剤取締法四一条の二、第一項三号、一九条

一、(刑種の選択)(判示第一、第二の(一)(二)(三)、第三、第四の各罪につき) 所定刑中各懲役刑(判示第一は有期懲役刑)を選択

一、(累犯加重) 刑法五六条一項、五七条、判示第一の罪につき更に一四条

一、(法律上の減軽)(判示第一は従犯につき) 同法六三条、六八条三号

一、(併合加重) 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重くかつ犯情の重い判示第五の(一)の罪の刑に法定の加重)、一四条

一、(未決勾留日数の算入) 同法二一条

一、(没収) 同法一九条一項一号二項

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木村幸男 裁判官 白川清重 長谷川俊作)

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